2.

 

 庭園に出る掃き出し窓を開け放ち、トゥーリは洗い髪を風に乾かしていた。

 晩夏の夕闇が、昼の暑い乾いた風を優しく冷やしていた。さらりと長い髪が風に散った。

 彼は抱いていた猫の“トゥーリ”を床にそっと下ろすと、マジュリスのセリカのマットレスに座った。そして、クッションを背にかち、朱房で髪を束ねた。

 彼は脚にすり寄る猫を膝に抱き、アデレードの来るのを待った。

 

 アデレードは扉を細く開け、身体を滑り込ませた。できるだけ静かに開けたつもりだったのに、トゥーリは顔を向けた。

 彼は脚を投げ出し、猫を撫でながら、寛いだ様子で座っている。片肘を預けた長櫃の上に、大食のランプが載っていた。明々と灯っている。

 彼女はゆっくり歩み寄った。彼はその様子をじっと眺めていた。強い眼差しだった。

 もう既に、胸が高鳴っていた。夕方のことが思い浮かび、身体が熱くなった。

「待て。そこに立て。」

 彼女は彼の目の前に立ち止まった。

 彼は座ったまま、彼女を見つめた。

「脱いで。」

 優しい声だった。彼女は、薄物の上に羽織った上衣を脱いだ。

「それも脱ぐんだ。」

 薄物を取り去ったら、全裸だ。恥ずかしいと思ったが、震える手は勝手にサッシュを解いていた。両肩が露わになった。彼女は薄物がそれ以上落ちないように腕で押さえた。

 俯いても、彼の視線が肌に向かっているのを感じる。

「脱いで。」

 彼はもう一度そう言った。ほとんど囁くような声だった。

 また、魔法にかかったように手が動いた。さらりと衣が落ち、胸が露わになった。腰から落ちようとするのを、彼女は慌てて押さえた。

「手を離して。」

 彼女は真っ赤になり、言われた通りにした。衣が足許に落ちた。彼女は、胸と腿を腕で隠した。

 彼がどんな顔をしているのかうかがうと、目が合った。彼は視線を外し、ゆっくりと彼女の身体を見つめた。

 首筋、肩、胸と、視線がゆっくり落ちていく。腹、腰の辺りから、脚。

 視線に犯されていく。

 彼女は身震いした。

 胸の頂がつんと立ち上がり、脚の間がむずむずとし始めた。

(見られているだけなのに…)

 彼女は脚をきゅっと引き締め、腿を小さくこすり合わせた。

 彼女は目を閉じた。しかし、彼の視線が向けられた場所に、ますます敏感になっただけだった。

 

 長い時間に思われた。

 にゃあんと猫が鳴いた。とんっと床に飛び降りる微かな音がした。

 彼が自分の前に立った気配があったが、目を開けられなかった。彼女は腕で身体を隠し、彼に背を向けた。

 彼は彼女を後ろから抱き締めた。

「お前、いやらしいな…」

 彼は硬くなった胸の先端を指で弾いた。

「きゃん…」

 彼は小さく笑って、片腕に彼女の腰を抱き、乳房を持ち上げた。そして、柔らかく揉んだ。

 小さな胸は、大きな手の中に納まった。指の間で先端が擦られ、彼女は息を詰め、唇を噛んだ。

「声…我慢しないで。」

「あ…」

「…少し大きくなったかな?」

「あぅ…ん…大きくなった?…あ、はあ…大きいのが好きなの?」

 彼女は眉間を寄せ、苦しげに喘いだ。

 彼は、彼女の可愛い胸が好きだったが、急に意地悪な気持ちが挿してきた。

「…ああ。下品なくらい大きいのが好きだな。」

 笑いを含んだ声だった。

「いやん…嘘…意地悪言わないで…」

 彼は胸を揉み上げ

「…男に可愛がられると大きくなるんだよ。俺が大きくしてやる。」

と言って、先端を摘んだ。

「あっ…」

 ゆっくりと指先で押しつぶすように弄られ、軽く引っ張られる。

(それは…だめっ…)

 脚から力が抜けていった。

 彼は左手を脚の間に伸ばした。

「こんなにして…はしたない女だ…」

 指が蕾をこすった。

「あっ、あっ…ふ…あ…」

 蜜が彼の指に絡みつき、奥に誘う。彼の指が秘裂に滑り込んだ。谷間をなぞり、蕾を撫で上げる。溢れ出た蜜を塗りつけ擦る。与えられる快感にがくりと膝が折れ、彼の腕に抱き止められた。

 そのまま二人は、緞通の上に崩れた。

 

 彼は彼女の脚を割り、秘裂を撫でた。

「溢れて…掬って舐めてあげるね…」

 彼は彼女の脚の間に跪いた。

 花弁を舐め上げた舌が裂け目をなぞり、分け入った。湿った音が漏れた。ゆっくり花弁の内を行き来する。

 指が花弁を開いた。蜜を啜る淫らな水音がした。

 やがて、花弁の合わせ目に舌が触れた。くすぐるように舌先が動いた。蕾の周りをぐるりと舌が辿った。

 吸い上げ、軽く歯を立てられ、彼女は大きな声を挙げた。

「ぷっくり膨らんで…真っ赤だ。」

 彼は敏感な蕾を舐めながら、指をゆっくり秘口に挿し入れた。

 彼は身を起こし、指をもう一本入れた。指が抜き差しされる度に、親指が蕾を刺激する。

 そうしながら、胸に口づけし、固い頂を激しく吸い上げた。二本の指が中でばらばらに動いた。彼女は悦びの波に呑まれた。

「あああっ!」

 力が抜け、はぁはぁ荒い息を吐いた。

「ほら…」

 彼は彼女の目の前に、濡れた指を示した。蜜が絡みつき、糸を引き、彼の手を汚している。

 彼は彼女に見せつけるように、ぺろりと指を舐めた。

 ぞくりとする艶めかしさだった。

「淫らな味がする…」

 彼は、彼女の半開きになった口の中に指を入れた。

(…いやらしい味…こんなのが…)

「…欲しい?」

 彼女はこくりと頷いた。彼はにっと笑って

「何が欲しいんだ?言わないとわからない。」

と言った。

(そんな…言えない…)

 言えないでいると、彼はクッションを背に座り直した。彼女を横に座らせると

「お前も…して。」

と言った。

「え…?」

「ここで…」

 彼は指で、彼女の唇をなぞった。

(それを口で…?)

「ほら…」

 彼は彼女の頬を撫でて見つめた。

 彼女は赤くなりながら、芯を持ち始めたものを握った。彼女の吐息が触れると、ひくりと震えた。

「口づけして…」

 唇を寄せ、軽く口づけた。むっと雄のにおいがした。

「そう…舐めて…」

 先端に舌を這わせると、彼は彼女の髪を撫で

「ふ…気持ちいい…」

と言った。

 舌で舐め上げると、彼は息を弾ませた。彼のものはどんどん固くなり、形を変えた。

 彼の立ち上がったものを見て、彼女はごくりと唾を飲みこんだ。先端から透明な蜜がつぅっと滴った。

「感じると、男も濡れるんだ…」

「…感じたの?」

「うん。もっと…口に入れて…咥えるんだ。」

 おずおずと口に含むと、彼は息を詰めた。

 口から離し、もう一度口に入れると、彼は彼女の頭を上下に揺らした。

(そうすると…気持ちいいの…?)

 彼女は彼の根元に手を添え、ゆっくり頭を動かした。彼女の唾液と彼の滴りが混じり合い、じゅるじゅると口許から音が立った。彼が口許を見つめているのを感じた。それだけで、身体が熱くなった。

 彼女はできるだけ深く彼のものを含んだ。彼の吐息が荒くなる。彼女は夢中で、彼のものをしゃぶった。

 

 彼は彼女の肩を押し、横たわらせると、彼女の秘部に顔を埋めた。

 彼女は彼の意図するところを察した。

(恥ずかしい…)

 彼の舌が、彼女の女の部分を容赦なく攻めたてる。

「ほら…口がお留守だぞ。」

 彼は彼女を顔の上に跨らせた。

(そんな…そんな…)

 恥ずかしさが湧き上がれば湧き上がるほど、蜜がとろりと溢れてくる。ぴちゃぴちゃと水音がする。

「ふっ…ふぅ…うぅん…」

 彼女は彼のものを咥え、舌でしごいた。

 淫らに腰を揺らし、お互いの秘部を舐め合った。

 だが、彼女は彼の舌が与える快楽に、すぐに溺れてしまう。

「ああ…ん。ああん。だめ…だめなの…あ…」

 彼のものを握ったまま、喘ぎ声を挙げるしかできなかった。

 彼の舌が蜜壺に入り、入り口で蠢いた。

「ああ…いい…それ、だめぇ…」

 舌が出入りして、溢れ出たものをじゅるじゅる啜る。

「もう…もう…」

「何?」

 くぐもった声が問うた。

「もう…欲しいの…欲しい…」

「何を?」

「アナトゥールのが欲しい…」

「俺の何?」

「アナトゥールの…これ…」

「どこに?」

「私の…中…」

「そんないやらしいこと、言うのか…」

「だって…して…。入れて…早く…」

「…だらしなく垂れ流して…欲しそうにひくついている…。いけない女だな…お仕置きだ。」

 

 彼は彼女の腰を抱き、後ろから貫いた。彼女の中は、悦びに震え、やっと与えられた彼のものを締め付けた。

 彼は指先で番った部分をぐるりとなぞった。

「ほら、お前のここ。美味しそうに俺を咥え込んでいる。」

 彼女は快感にぶるぶる震えた。彼はまた、尻の谷間を指先で辿り

「尻の穴まで丸見えだぞ。恥ずかしいな。漏らしたみたいに…こんなところまでぬるぬると…」

と言った。

 彼女は息を荒がせた。

「いや…そんなこと言わないで…!」

「そう?きゅうきゅう締め付けてくるぞ?」

 彼がゆっくり動き始めると、反ったそれが背中側を抉るように擦った。

 蜜が垂れ、ぐちゅりと卑猥な音を立てた。

「もっと…奥まで入れて…」

 彼はぐっと腰を入れた。

「ああぁ…」

 腰が甘く蕩けた。

 下がりそうになる腰を抱えられ、打ち付けられた。肌のぶつかる音が響いた。

 抱えていた彼の手が回り込み、蕾に触れた。押し、円を描いて撫でる。

 脚の震えが止まらなくなり、もう腰を上げていることができなかった。うつ伏せに落ちると、彼のものがずるりと抜けた。滴った蜜が緞通を汚した。

 

 彼は彼女を仰向けにして、また挿し貫いた。そして、彼女の手首を取り、起こした。膝に抱き、胸に口づけを落とす。

 彼女は腰をくねらせ、彼に抱きついた。上下に揺すられると、胸の先端が彼の胸に擦られた。

「あ…ん…」

 彼が後ろに身体を倒した。奥の奥まで彼のもので満たされた。夕方に教えられ、すぐに達してしまったところに、触れている。

(そこは…)

 彼女はぎゅっと目を閉じ、荒い息を吐いた。

 彼は軽く笑い

「お馬さんだよ。…ゆっくり常歩から…ほら、腰を揺すって。」

と言う。

 下から見上げられ、彼女は俯いて、ゆっくり腰を動かした。動くたびに真奥が刺激され、淫らな蜜が溢れだす。強すぎる快楽が恐ろしい。

 彼女は動くのを止め、彼の胸に手のひらを着き堪えた。彼は下から突き上げた。

(やっ…嫌…止めて…そんなことされたら…)

 容赦なく突き上げられ、どんどん絶頂感が押し寄せてくる。

「ああぁん!」

 腿に力が籠り、背中がぞくそくと泡立った。

 

 達したばかりなのに、更に快楽を求めて腰が勝手に動いた。円を描くように動くと、熟れた蕾が彼の恥骨に触れ、ふるふると震えるような悦びが湧き上がった。

「あっ…はうっ…ううん…」

 こすりつけるように、前後に激しく腰を動かした。

「…なんて、淫らな腰だ。止められないんだろ?気持ち良くて…」

 余裕綽々の言葉だった。

 彼女は何度も頷いた。彼は彼女の手首を握り

「ほら…言って、気持ちいいって。」

と突き上げた。

「…気持ちいい…あ、あっ…いい、気持ちいいの!…ああっ…ん!」

 彼女は彼の上に伏せ、口づけしながら、また達した。

 彼は彼女を抱いたまま、体勢を入れ替え、ゆっくりとした抽挿を始めた。

「あ…もっと…」

「もっと、何だ?」

「もっと激しくして…」

 蜜壺の入り口を彼のものが擦った。張った部分が引っかくように刺激した。もどかしい快感だった。

「もっと…もっと…奥まで欲しいの…」

「欲張りだな…」

 彼はぐっと真奥まで貫いた。

「ああっ!…やん…きつい!」

 一杯に満たされ、突かれる度にぐちゅぐちゅといやらしい水音がした。

 彼女は彼を抱き締め、腰を擦り上げた。

「あ…ん。ああん。…は…うん…」

「絡みつく。…ふ…とろとろに熱い…」

「あぁ…はぁ…あ…ああぁん…いい…いい…」

「…くっ…あんまり…締め付けるな…」

「ふぅん…うっ…ああ…ん…いっちゃう…いっちゃうの!」

「…いけよ…」

「一緒にいって…」

「うん…ん、ん…いく…!」

 彼は腰を荒々しく打ち付けた。朱房がほどけて、ばらりと長い黒髪が散った。

 彼女は背を反らして、激しく達した。彼の精が奥を叩く度に、悦びが満ち溢れてきた。

 

 彼は深いため息をついて、ごろりと彼女の隣に仰向けになった。

 二人とも、しばらく荒い息が治まらなかった。

 やがて、彼女は甘えた声を漏らし、彼に擦り寄った。彼は彼女を胸に抱き込んだ。お互いの温もりに、深い満足と安堵を感じた。

 鼓動がとくんと命を刻む。優しい音だった。




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